Lefty in the Right

愛されているという驚きほど、神秘的な驚きはない

それは人間の肩に置かれた神の指だ

いつからか気になる娘がいた

不器用で人見知りでいつも人と離れて行動している娘

そんな娘がどういうわけか自分にだけは話しかけてくる

僕を見つけると遠くから名前を呼ぶ

目が合うと笑顔で手を振る動作をする

いつからか僕の方もその娘を探すようになり

姿を見つけてはまたすぐに目線を元に戻す

そんなことを日に何度も繰り返すようになった

一方その娘には彼氏がいた

だから実らない恋と決して好きにはならないと

初めから割り切っているつもりだった

毎日自分に向けられる言葉と笑顔と視線

遠ざけようとすればするほどその健気さが際立ってしまい

一緒の空間にいるのが辛かった

だから他の人を好きになることにした

いつも話しかけてくる同い年の人

顔を覗きこんで話しかけてくるくせ

言葉を返したり顔を見返したりすると

照れたような困ったような表情になる

よくわからない人

丁寧な言葉遣いをその人の前だけ崩すことにした

それでいろんな事が伝わるだろう

ふたりは友達

きっとあの娘にも伝わるだろう